
日本:6月22日に清算人が「第3回報告書」を公表
最も新しい動きは、世界平和統一家庭連合の清算人が6月22日、東京地裁へ提出した「報告書(第3回)」を公式サイトに掲載したことです。第2回報告書は5月20日付でしたので、清算状況に関する約1か月ぶりの公式更新となります。
以下、これまでの第1回・第2回報告書の流れを整理したうえで、2026年6月22日付の第3回報告書が何を意味するのかを解説します。
◆全体の結論
清算手続は、次の三段階で進んできました。
- 第1回報告書:資産・職員・契約などの全体像を把握し、財産流出を防ぐ段階
- 第2回報告書:債権申出制度を開始し、職員整理・施設閉鎖・資産売却の方針を決める段階
- 第3回報告書:債権申出数や自動車処分数など、実際の清算実績が数字として現れ始めた段階
ただし、被害者への弁済額や配当率を決められる段階には、まだ達していません。
◆Ⅰ.第1回報告書――清算開始直後の「掌握・保全」
第1回報告書は、解散命令後に清算人が旧法人の管理を引き継ぎ、全国に散在していた財産・職員・契約関係を把握することが中心でした。
清算開始前の家庭連合は、全国の教会・施設が、それぞれ給与、賃料、経費などを支払う分散型の運営でした。そのため清算人は、まず次の作業を行う必要がありました。
- 預金口座や現金の確認・保全
- 所有不動産と賃借不動産の調査
- 職員数、給与、雇用契約の確認
- 車両・船舶・備品の調査
- 係属中の訴訟・調停の把握
- 全国施設から東京・松濤本部への会計情報集約
この段階では、まだ「何を、いくらで売却するか」「被害者にいつ支払うか」を決める前に、旧法人が実際に何を所有し、どれだけの費用と債務を抱えているのかを確認することが優先されていました。
◆Ⅱ.第2回報告書――清算方針を具体化
2026年5月20日付の第2回報告書では、清算の基本方針が具体化されました。
1.債権申出の受付開始
債権申出期間は、
2026年5月20日から2027年5月20日まで
の1年間です。
申出方法として、
- オンライン申請
- 書面による郵送申請
が用意されました。
また、清算人が保有・確認している範囲で、過去の献金情報の開示を申請できる制度も設けられました。
ただし、旧法人に残っている献金記録は網羅的・完全なものではないため、開示申請をしても、すべての献金額が判明するとは限らないことが示されました。
2.約900人を解雇、約500人を残す
第2回報告書では、清算事務に直ちに必要ではない職員約900人が、5月20日付で解雇されました。
残された職員は約500人で、主に次の清算事務を担当します。
- 会計・経理
- 給与や契約の処理
- 債権申出の調査
- 献金資料の確認
- 不動産の明渡し
- 車両・備品の処分
- 訴訟対応
つまり、旧法人は宗教活動を行う組織から、財産と債務を整理する清算法人へ移行しました。
3.資産整理の対象
第2回報告書で示された主な対象は、おおむね次のとおりでした。
| 資産・契約 | 第2回時点 |
|---|---|
| 所有不動産 | 約200件 |
| 賃借不動産 | 約700件 |
| 自動車 | 約600台 |
| 船舶 | 2隻と認識 |
| 職員 | 約500人 |
遊休不動産や関連団体が使用していた不動産については、先行して売却する方針が示されました。
賃借不動産についても、不要な物件を解約し、明渡しを進めるとされていました。
◆Ⅲ.第3回報告書――初めて具体的な実績が明らかに
第3回報告書は、2026年5月20日ごろから6月22日までの、約1か月間の進捗報告です。
最大の特徴は、申出者数、書類発送数、自動車処分数、施設維持費など、具体的な数字が初めて示されたことです。
1.債権申出者は61名
報告書提出日の前営業日現在で、債権申出を行った申請者は、
61名
でした。
ただし、この61名は「債権が認められた人」の数ではありません。
今後、清算人はそれぞれについて、
- 本人・代理人であるか
- 献金や支払いの事実があるか
- 違法行為や損害との因果関係が認められるか
- 債権額はいくらか
- 時効などの問題がないか
を調査します。
したがって、
申出者61名 = 認定債権者61名
ではありません。
また、申出期間は2027年5月20日まで残っているため、現時点の61名を最終的な被害者数や債権者数と見ることはできません。
清算人自身も、今後申出者が増加すると予想しています。
2.書面申請用紙は152名に発送
オンライン申請が難しい人などからの要望を受けて、
152名に債権申出書・献金等情報開示申請書を発送
しています。
現状を整理すると、
- すでに債権申出をした人:61名
- 書面を取り寄せて検討している人:最大152名
- オンライン上で手続を検討している人:人数不明
という構造です。
発送を受けた152名全員が申請するとは限りませんが、申請予定者が61名より相当多く存在する可能性を示しています。
3.本人確認が厳格化されている
債権申出は、本人または正式な代理人が行う必要があります。
清算人は、
- 郵送申出者には本人確認書類の同封
- オンライン申出者には本人確認書類のアップロード
を求めています。
これは、なりすましや他人名義の利用を防止するためです。
献金者本人が亡くなっている場合は、その相続人が開示申請できますが、相続関係を確認するため、戸籍などの資料を求められる可能性があります。
この本人確認作業があるため、申出から実際の債権調査開始まで一定の時間を要します。
4.献金記録は不完全
清算人は、第3回報告書でも、旧法人に残る献金記録について、
網羅的でも完全でもない
と明記しています。
したがって、開示申請をしても、
- ある時期の献金記録しかない
- 地方教会で扱った現金献金が記録されていない
- 関連団体を経由した支払いが確認できない
- 本人が記憶する金額と法人記録が一致しない
という可能性があります。
開示情報に献金記録がなかったとしても、直ちに「献金していない」と確定するわけではありません。
申出を検討する人にとっては、清算人からの開示資料だけでなく、
- 預金通帳
- 振込明細
- 領収書
- 献金手帳
- 教会からの通知
- 家計簿
- 家族の証言や記録
なども重要になります。
5.全国広告を実施、テレビCMも検討
清算人は、5月下旬から6月初旬にかけて全国の日刊新聞に広告を掲載し、ウェブ広告も開始しました。
さらに、テレビCMも検討しています。
これは、清算人が、
清算手続を知らない潜在的債権者が全国に相当数存在する
と考えていることを示します。
現在の61名という申出者数が少ないために広告を強化している面もあると考えられます。
清算人には、できるだけ広く債権申出制度を知らせ、後になって「申出制度を知らなかった」という人が出ないようにする必要があります。
6.職員約500人は維持
第3回報告書でも、職員数は、
約500人
です。
第2回報告書から大きく変わっていません。
これは、現在も全国規模で、
- 会計資料の集約
- 給与・経費処理
- 債権申出への対応
- 献金資料の検索
- 賃貸物件の明渡し
- 不動産・車両の処分
など、多数の作業が残っているためです。
ただし、報告書は雇用契約の取扱いを「引き続き検討する」としています。施設の閉鎖や経理集約が進めば、今後さらに人員削減が行われる可能性があります。
7.賃借物件の維持費は毎月約1億5000万円
第3回報告書で最も注目すべき数字の一つです。
全国で借りていた教会、事務所、施設などについて、
毎月合計約1億5000万円
の賃料と管理諸経費がかかっていました。
単純に12か月分として計算すると、年間約18億円です。
もちろん、現在は順次解約しているため、今後も年間18億円が丸々支出されるわけではありません。しかし、施設整理が遅れるほど、清算財産が毎月減っていくことになります。
そのため、清算人は、
- 不要な動産を処分
- 必要な資料・備品を搬出
- 契約を解約
- 物件を明け渡す
という手順を進めています。
この記載から、日本各地の旧教会・事務所の閉鎖や集約は、今後もかなり速い速度で進むと考えられます。
8.所有不動産はまだ「売却準備」
旧法人が所有する遊休不動産については、
売却に向けた準備に着手
した段階です。
ここには、旧法人自身が使用していない不動産だけでなく、
関連団体とされる法人・団体に使用させていた不動産
も含まれます。
したがって、現在関連団体が使用している建物であっても、旧法人名義であれば、清算人が売却対象にする可能性があります。
新団体や関連法人が存在していても、旧法人の土地・建物を当然に引き継げるわけではありません。
ただし第3回報告書では、次の点はまだ公表されていません。
- 売却対象物件の名称・所在地
- 売却予定件数
- 査定額
- 買手候補
- 売却済み件数
- 売却代金
不動産は清算財産の中でも価値が大きいと考えられるため、今後の報告で最も重要な項目になります。
9.自動車約250台の処分が完了
第2回報告書で約600台とされた自動車について、第3回報告書では、
約250台の売却等が完了
したと報告されています。
約600台を基準にすると、およそ42%です。
これは第3回報告書で最も明確に確認できる清算実績です。
清算人が車両利用を禁止したのは、事故が起きた場合に、旧法人が所有者・運行供用者として損害賠償責任を負う危険があるためです。
残る車両は概算で約350台ですが、すべてが通常の市場価格で売却できるとは限りません。
車齢、状態、車検、名義、地域、処分費用などによっては、廃車となる車両も含まれると考えられます。
10.船舶は2隻から1隻に訂正
第2回報告書では、旧法人所有の船舶は2隻とされていました。
しかし、第3回報告書で、
うち1隻は旧法人の所有物ではなかった
と訂正されました。
実際に旧法人が所有する船舶は1隻で、航行不能状態です。売却または廃船手続に着手しています。
この訂正は、清算開始時点の資産台帳と実際の所有関係に食い違いがあったことを示しています。
清算人は、登記、登録、契約書、購入資料などを照合して、本当に旧法人の財産なのかを一つずつ確認していると考えられます。
11.墓地・霊園問題は未解決
墓地・霊園については、第1回から第3回まで、明確な最終方針は示されていません。
理由は、墓地・霊園ごとに、
- 土地所有者
- 墓地経営の許可名義人
- 管理者
- 使用権者
- 納骨者と遺族
が異なる可能性があるためです。
したがって、通常の不動産と同じように、単純に売却することはできません。
清算人は、墓地・霊園の権利義務を誰に承継させるかを慎重に検討しています。
現時点で、利用者の墓地使用権や納骨の権利が直ちに失われるという意味ではありません。ただし、将来の管理主体や宗教儀式の実施主体は未定です。
12.訴訟・調停には大きな変化なし
旧法人が原告となっている訴訟については、できるだけ速やかに終結させる方針が維持されています。
旧法人が被告・相手方となり、損害賠償を請求されている訴訟・調停については、清算手続との整合性を見ながら対応するとしています。
第3回報告書では、
- 和解成立件数
- 敗訴・勝訴件数
- 支払った賠償金
- 取下げ件数
などの具体的な実績は公表されていません。
なお、すでに損害賠償訴訟や調停を行っている人でも、清算手続に参加するためには、原則として別途債権申出が必要です。
第1回から第3回までの比較
| 項目 | 第1回 | 第2回 | 第3回 |
|---|---|---|---|
| 清算の中心 | 財産・組織の把握 | 清算方針の具体化 | 実施状況の報告 |
| 債権申出 | 制度準備 | 5月20日受付開始 | 申請者61名 |
| 献金情報 | 記録調査 | 開示申請制度開始 | 本人確認を順次実施 |
| 職員 | 全体像を調査 | 約900人解雇、約500人残留 | 約500人を維持 |
| 所有不動産 | 権利関係を調査 | 約200件、売却方針 | 遊休物件の売却準備 |
| 賃借不動産 | 契約状況を調査 | 約700件、順次解約 | 月約1.5億円、明渡し推進 |
| 自動車 | 台数等を調査 | 約600台、処分方針 | 約250台処分済み |
| 船舶 | 調査 | 2隻と報告 | 実際は1隻と訂正 |
| 墓地・霊園 | 権利関係調査 | 承継方法を検討 | 引き続き検討 |
| 被害者への弁済 | 未定 | 未定 | 未定 |
◆第3回報告書から読み取れること
清算は止まっていない
自動車約250台の処分、施設の明渡し、全国広告、本人確認作業など、清算実務は具体的に進んでいます。
ただし、中心資産の不動産処分はこれから
価値が大きいと考えられる不動産は、まだ「売却準備」です。清算財産が最終的にいくらになるかは、不動産の査定・売却結果に大きく左右されます。
債権者数・債権総額はまだ読めない
申出者は61名ですが、広告の効果、書類発送者152名、申出期間の長さを考えると、今後増える可能性があります。
また、人数が同じでも、1人当たりの請求額には大きな差があるため、61名という人数だけでは総債権額を推定できません。
固定費削減が急務
賃借施設だけで毎月約1億5000万円の費用が発生していました。人件費、施設管理費、清算専門家費用などもかかるため、清算が長期化すれば財産が減少します。
そのため、清算人は施設閉鎖と車両処分を先行させています。
関連団体への財産承継は当然には認められない
関連団体が使用している旧法人所有不動産も、遊休不動産として売却対象になります。
したがって、新団体や関連法人が宗教活動を継続していても、旧法人の資産をそのまま引き継げるわけではありません。
◆まだ分からない重要事項
第3回報告書でも、次の重要情報は明らかになっていません。
- 債権申出総額
- 献金情報開示の申請件数
- 債権として認定された人数・金額
- 不動産の評価総額
- 不動産の売却実績
- 預貯金を含む現在の純資産額
- 清算に要する経費の総額
- 被害者への弁済開始時期
- 弁済率・配当率
- 残余財産が生じるか
- 墓地・霊園の承継先
これらが判明しなければ、最終的に被害者にどれほど弁済できるかは判断できません。
◆総合評価
第1回は旧法人の全体像を把握する段階、第2回は人員整理と債権申出を開始する段階、第3回は実際の処分・受付実績が数字として出始めた段階です。
第3回で最も重要なのは、
- 債権申出者61名
- 書類発送152名
- 賃借物件費用が月約1億5000万円
- 自動車約250台を処分
- 不動産はまだ売却準備
- 職員は約500人のまま
という点です。
一言でまとめると、
清算人は固定費削減と動産処分を着実に進めているが、債権総額と不動産価値が未確定なため、被害者への弁済見通しを示せる段階にはまだない
というのが、第3回報告書の正確な評価です。